誰かの為のラブソング
「お兄ちゃん、すげぇー!!」
少年達は集団となって理久に近寄ってくるとそれぞれ感嘆の声を上げた。
「ねぇ、どうやったらそんなスゲェパス出せれんの?」
「俺にも出来る?」
口々に喋る質問攻めに理久は思わず面を食らった。
「…出来るようになるさ。
足腰鍛えれば」
「マジ?!
お兄ちゃん、サッカー教えてよ!
僕等、FC入ってるんだけど、
なかなか上手くならなくてさ…
」
教えて、教えて〜と小学生達は理久の袖を掴みながらフィールド上に引っ張った。
「…っ引っ張んなって」
「いーから!」
強引すぎる小学生達は目を爛々と輝かせながら理久を見つめ続ける。
…そんな目で俺を見るなよ…
理久は困惑した。
「お兄さん、どこかに所属してるの?」
「バカ、そんなん見たらわかるだろー」
小学生達は理久に興味深々だった。
「…お前らと同じFC出身だよ。」
根負けしたのか理久は静かに微笑んだ。
「マジ!
やっぱ違うと思ってたんだ!
俺ら、レギュラーになれなくてさ…全然上手くならないんだ…
」
だからいつもここで自主練習をしているんだと彼等は付け加えた。
「…大丈夫。
俺も死に物狂いで練習して、
レギュラーになれたからさ。
諦めるなよ、諦めたらそれで終わりだし。
絶対、努力は身を結ぶから」
「ホント?」
「ああ、経験者が語るから間違いないよ」
そして彼等は安堵の表情を浮かべた。
昔の自分と同じだった。
あの頃の俺は、
ただがむしゃらに夢に突き進んでいた。
努力すれば夢は叶うんだ。
信じて疑わない自分がそこにいた。