誰かの為のラブソング



「こうも酷使してるとね、クセになってよく怪我をしやすいもんなんだ。

無理をして一生サッカー出来なくなったら嫌だろう?」


ふと理久の脳裏に過去が甦った。
それは理久にとって思い出したくもない記憶だった。


「……………」


あれは、大怪我をしてから中学最後の全中予選前だった。

あの怪我のリハビリ後、経過はよくなったが、相変わらず小さな怪我は堪えることがなく、ある時、医者から選択を迫られた。


「今だけ見るんじゃなくて、この先のことも考えなきゃダメだ。
先生は今の状態で試合に出ることは勧めない。
いや、むしろ、反対するよ」


医者は次の試合でプレーすることに反対していた。



でも、俺は…。





「次の全中予選のレギュラーを発表する。

DF(ディフェンダー)上原、玉置、
FW(フォワード)神山……

CF(センターフォワード)…清水」


監督から告げられるセンターフォワードの中に但馬理久の名前はなかった。


「監督…
なんで俺が外れるんですか?!」

怪我の後、復帰してから何とか遅れを取り戻そうと必死になって頑張った。

何とかレギュラーのボーダーラインを上回る成績を収めていたのにレギュラーから外されるのは納得がいかなかった。


「…但馬、

お前はまだダメだ。」


監督はそれしか言葉を発しなかった。


もう、大丈夫だ。

痛みも違和感もない。

もうやれる。

なのに何でだよ。


「…但馬、無理をするな。
高校からでもまだ間に合うだろ…」


…高校?


それまで何をしろって言うんだ?


意味ないんだよ。


レギュラーじゃなきゃ


意味がないんだ…。






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