誰かの為のラブソング


「毎朝、散歩してるんだ」

「…え…?」

「犬の散歩。」

こくりと彼女は頷いた。

「…あ、俺もサッカーの朝練があるから、早いんだ」

何故か偶然を装う意味がわからず、理久は自分でも理解しがたかった。

「わっ
なんだよ、お前〜」

突然足元にいたコーギー犬は、理久の足に何度も頭を擦り寄せてきた。

「お前、コーギーなのにすげぇ人懐っこいなー」

理久は犬に目線を合わせると、コーギーの身体を無造作に触った。

コーギーのラブは理久の手を捕まえようと何度も口で噛み付こうと動き回る。


「…お前はホントに愛されてるんだな…」


つぶらな真ん丸な瞳に映るものは全て自分の味方。


人を信じて疑わない純粋なものだった。


「…ごめんなさい… 」


今にも泣き出しそうな彼女の声に理久は目を見張った。


「…え……
なんで謝るんだよ…?」


心に思うがまま、理久は言葉にした。


「…ごめんなさい…

もう…来ないで下さい…

…お願いだから…」


そう言いながら懇願する彼女の瞳には涙が浮かんでいた。



「…嫌だと言ったら?」


理久はリズを見つめた。


「…ダメなんです…

学校行かなきゃって、思う度に発作が出て、行けないんです…

こうやって迎えに来てくれても行けないんですっ

だから、もう来ないで下さいっ

あたしなんかの為に無駄なことしないで下さいっ…」

彼女は大粒の涙を流しながら、身体を震わせていた。


「…なんで無駄なことだって、決め付けんだよ…」


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