誰かの為のラブソング
「なっ何よっー!
このテンションはいつものことでしょー!?
だいたい、あんたって!」
愛香は思わず目の前にいる憎たらしい奴に食って掛かるが、当の本人の理久の様子が変なことに気づいた。
「…………は?…」
理久はリズをじっと見つめている。
視線を感じたリズは目を逸らすと思わず俯いた。
「…な…何?
あんたら、どうしちゃったの……」
異変に気付いた愛香の言葉は不安を抱いたかの様に段々とフェードアウトしていってしまった。
「…なんか…久しぶり……
元気か…?」
理久は、よそよそしくリズに問い掛ける。
「…うん…」
リズは俯いたまま静かに言葉を交わした。
あれから理久とは、まともに会話らしい会話はしていない。
顔を合わす度に無意識の内に理久を避けてしまう自分がいる。
理久と言葉を交わすことは、
答えを求められること。
その答えを出すともう、
修復出来ないかもしれない…
そんな気がして怖かった。
「…なーに、辛気臭い顔してんのよー、あんたらは。
こっちまで暗くなっちゃう〜
リズ、行こっ」
」
愛香はふいと背を向けるとリズの腕を掴み、この場からリズを連れ去った。
「………………」
理久はくしゃくしゃと前髪を掻くと、何時しか遠ざかっていくリズの背中をいつまでも眺めていた。