誰かの為のラブソング



『俺…
自分の事を歌にしてるんだ…』


ユウの歌を聴きながら、リズは彼の言葉を思い出していた。


週末のストリートライブ。


ユウの歌を聴く為だけに、沢山のファンが決まった時間に集まってくる。


ユウの音色から発するメッセージを受け止める為に。



『そうすることでなんとか今も
もってる…。』


ユウの弱い部分を垣間見てから、歌の雰囲気がまた一段と変わった気がした。

それは、ユウの歌を始めて聴いたあの時よりも痛切な痛みを感じる。



「…………」


曲の終演に続き、次の曲のイントロが流れ出した途端、駅前の噴水広場に歓声が上がった。


スローバラードから打って変わって、アップテンポの曲に変わったからだ。


絶望的な深い悲しみを抱いているだけじゃない。

ユウの歌は悲しみを力に変える。


前へ進む為の一歩に変える。



『じゃないと、
多分 壊れてしまってるよ…』


そう言いながら、情けなさそうに彼は笑ってみせた。





ユウは、

自分の身を削りながら、

歌に託す。


それは、まるで許しを乞うかのように。


歌は、受け止める聞き手が選ぶものなのかもしれない。


だからこそ、こんなにも沢山の人にユウは支持されているんだ。






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