誰かの為のラブソング

「 愛ちゃん、本当に
すっごい好きなんだね…。」


「ん?何が?」


「そのバンド。
だって、めちゃめちゃ嬉しそうにいつも言ってるしさ。」


「あ。わかる~?
だってさ、ボーカルの
ユキはカッコいいし、
曲なんかもう最高に
カッコいいんだから!

口コミでファンが増えちゃてさ、最近 出待ちしても近づけないんだからぁ。」

地元のインディーズファンの間では知らない人間がいないほどの有名バンドだとか、余りの人気でチケットが取れないだとか、愛香はまるで自分のことのように嬉しそうにこう語った。


「…なんか、
うらやましいな…」


「え? 」


「…ううん、ひとり言」

リズは、愛香に微笑んだ。


そんな愛香が
うらやましいと思った。


夢中になれることが
あって。



これだけは譲れないと
思うほど、好きなものがあって。


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