誰かの為のラブソング
「あ!
あの人っ!
RozeeL(ロゼル)と対バンしてた バンドのメンバーだっ~」
突然、愛香は大声を上げた。
街中を歩くパンク系ファッションのその彼は、ギターケースを肩に抱えている。
「…………。」
そういえば、駅で出逢ったあの彼もそうだった。
リズが持っていないものを大切そうに抱えていた。
「絶対、ユキのこと知ってるよね?
ちょっと話掛けてくるねっ!」
愛香はリズをその場に一人残し、足早に駆け寄って行ってしまった。
そんな愛香と、突然、話掛けられ躊躇しているバンドマンをリズはぼんやりと眺めた。
一人だけ取り残されて
いるような感覚がした。
流れるような街の風景は
せわしく、
何事もなかったかのように
今日一日を終えようとしていた。