誰かの為のラブソング
人が行き交う駅。
朝の通勤通学ラッシュはとうに過ぎているのに、この駅はいつも騒がしい。
リズの通う高校は、地元の駅から2駅行った街の中心部にある。
毎朝、満員電車に揺られ、人混みを掻き分けながら学校へと急ぐ。
そんな毎朝の光景がリズは大嫌いだった。
かと言って、自転車で遠方から通うのも、もっと嫌だ。
溜め息と人混みに埋もれながら、あてもなく続く流れにリズは身を任せた。
みんな…なんで毎朝
急いで行くんだろ…
人混みの中、ずれ落ちる眼鏡を何度も上げながら先を急ぐサラリーマン。
乗り換えの時間がないのか、何度も駅の電光案内板を見ながら移動する女性。
みんな、遅れないように足早に歩いていく。
「…遅れたらなんでいけないんだろ…」
ふと、リズは考えても仕方ないことを徐に口走っていた。