誰かの為のラブソング
「リズ、用意は出来たの?」
居室のドアの向こう側から、ノックが何度も響いた。
待つことが嫌いな母親は、かなりイライラしている様子だった。
「~ちょっと待って、
もう行くからっ。」
リズはクローゼットの裏側についている鏡で、身だしなみを整えた。
月一回、父親方の祖母が入っている老人ホームに家族揃って顔を見せに行っている。
今日はその月一回の日だ。
「…はぁ~」
リズはクローゼットを閉めながら、重い溜め息をついた。
「リズ!
お父さんが待ってるじゃないのっ早くしなさいっ」
口うるさい母親を無視しながら、リズは階段を下り家を出た。