誰かの為のラブソング

門が開き切らない内に豪邸の敷地内から一台の車が出てきた。


白のオープンポルシェだ。
911カレラSカブリオレ。
その車体フォルムは撫でるような曲線を描いている。


左の運転席にいるのはサングラスを掛けた若い女性だった。


ちらりと、こちらを見ると車を静かに停止させた。


「…何か用?」


「えっ、あのっ
えっーと、リズ、
名前なんだっけ?」


愛香の肘がリズをつついた。

リズは制服のスカートからメモを取り出した。


「えと、今井…
ともっのぶ?君…いますか?」


「? とものぶ?
ああ、友喜のことね。
友喜なら、いないわよ。」

そのサングラスの女性は20代後半といった感じだろうか。

どこかのモデルみたいに高貴な雰囲気を漂わせている。
非常に綺麗な顔立ちをしていた。

「留守なんですか…
じゃまた出直します。」

愛香は彼女の高貴な雰囲気に飲まれたのか、深々と頭を下げた。


「…また来ても、無駄かも。
アイツなかなか帰って来ないし。」


彼女は空を仰ぐようにこう言った。


「えっ!
そうなんですか?
どうしよう…、私達、理事長に頼まれてるんです。
今井君に学校に来るよう説得しろって。」


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