誰かの為のラブソング


「えっ~? 夢?」

ファミレスの厨房でその彼女は大きな声を上げた。

「うん、美樹さんには夢とか目標とかあるのかな~って。」

彼女はリズの問い掛けを聞き流しながら、手際よくオーダーの入った料理を作っていく。

「夢…か~。
そう言われるとなかなかすぐには出てこないのよねぇ~」

あ、川嶋さん、
手が止まってるわよ と 彼女、松枝美樹はすかさず付け加えた。


ここのファミレスの料理のほとんどが、レンジでチンが主流である。

バイトだけでも手際よく料理が作れるようにと、レンジ調理のマニュアルまでもが存在する。

「はい!出来たよ!
川嶋さん、5番ね!」

彼女、松枝美樹はドン!と完成した料理をリズの目の前に差し出した。


「了解です。
いってきます。」


彼女、松枝美樹は私立の短大生だ。

親からの仕送りでは足りないらしく、こうして毎晩バイトに励んでいる。


最近では、バイトばかりして出席日数が足りず留年の危機だと、笑いながら言っていた。


バイト先の同僚の中では一番リズと仲が良く、頼れるお姉さん的存在だ。


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