誰かの為のラブソング
「お待たせ致しました。」
リズは厨房からホールに出ると、客を見ることもなく、料理をテーブルの上に置いた。
この瞬間がリズは一番嫌いだ。
「お姉さん、今日も頑張ってるじゃん。
また遊びに行こうよ~」
「って、まだ一度も
遊びに行ってねぇつーの!」
ぎゃはははと盛り上がる同年代の男連中は、よく見かける常連達だ。
「……………。」
これさえなければ、
全然苦にはならないのに。
「またアイツら~?
バカ騒ぎするなら居酒屋に行けっての。」
松枝美樹は舌打ちをしながら、リズに近寄ってきた。
「気にしちゃダメよー。」
正直、彼女に救われている。
彼女がいなければとっくに辞めていたかもしれない。
「ねぇもしかして、学校で進路希望とか聞かれた?」
「えっ?」
「さっきの話の続きよ~」
「うん、そうなんだけど、何も決まったこととかないから、私…
美樹さんはどうなのかなって、ちょっと聞きたかっただけなんです。」
何故だか松枝美樹は、じぃぃとリズを見つめている。