誰かの為のラブソング


目標。



そこにいきつくように

またそこから外れない

ように目印とするもの。


「………その、
[そこ]が見つからないんだよね……。」


蒸し暑さが一年ぶりに訪れようとしていた夜だった。


リズはバイトを終え、一人、街の繁華街の中を駅に向かって歩いていた。


わずかに生暖かい空気が肌に触れ、かえって気持ちが悪い。


それは、どことなく今のリズの心境に似ていた。


「はぁ……。」


無意識のうちに溜め息が零れる。




目標なんて何でもいいって、
美樹さんは言ってたけど……


その些細なことでさえも思いつかない。



「勉強を頑張る。

バイトを頑張る。

……」


言葉を並べてみたけど

違うような気がする。


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