誰かの為のラブソング
リズは、そのメロディに導びかれるようにある場所へと辿り着いた。
……アコースティックギター?
辿り着いたその先は駅の噴水広場だった。
「…………。」
歌声。
今まで聴いたことがなかった。
こんなに深みがある優しい歌声ははじめてだった。
歌う本人しか持ち合わすことのない独特な声質だった。
街を歩く人達が思わず足を止めるほど、その歌声は慈愛に満ち心に響いてくる。
皆、その歌声に真剣に向き合おうと人だかりが出来ていた。
リズは吸い込まれるようにその歌声の持ち主を見つけた。
徐に、携帯電話が鳴り響いた。
『リズ?!
聞いてよっ!
あの理事長の息子って
RozeeL(ロゼル)のユキだったんだよっ!!
信じられないよっ!
どうしよぉぉっ!!』
愛香が電話口で興奮している。
『ちょっと?!
聞いてんの?!
リズってば~!』
リズは思わず携帯電話を下ろした。
その歌声の持ち主は
駅で涙を流していた
あの彼だった。
「……………。」
騒がしい街並みの風景にクラクションが鳴り響いた。
それは、
音色と共鳴するように
いつまでも鳴り止むことを知らなかった。