誰かの為のラブソング
「あのっ…
だから、違うんです!
歌、物凄くよかったです。
心に響いてきました。」
リズは俯いたままこう言った。
「なんか…
歌声が聴こえてきて…
とても、気持ちがよくて…
引っ張られてここにきた感じでした…」
リズの横に居座る彼は鼻の頭を触っていた。
「それで、気持ちよく
寝ちゃったってわけか~」
リズは彼を思わず見つめた。
「ちっ違いますってばっ~!」
あははっと彼は爆笑すると、だから、真に受けるなって~と再び大ウケしている。
「…でも、
そう言ってくれて嬉しいよ。
これでも、本気でやってるからさ。」
彼の歌は聞いている者の心を突き動かす。
真剣に音楽と向き合っているから、聴いているものも真剣に向き合う。
そんな気がした。
「…感情って
音に伝わるもんなんですね…。
…凄く…。」
リズは足元に広がるアスファルトを見つめた。
「…それって…
…どんな感じ? 」
確かめるように慎重に彼はこう聞き返した。
「…なんか…
悲しいっていうか…
痛みが伝わってきました…」