誰かの為のラブソング
決して、悲しい曲ではなかったけど、
どこか、痛みを覚えた。
それは、
涙を流していた彼の姿を見たからだろうか…。
「……また、来てね。」
「えっ?」
彼はいきなり立ち上がると、ジーパンについた埃を払った。
「週末。
必ず、ここで歌ってる
からさ。」
そう言うと彼は優しく微笑んだ。
「…あっ…
はっ……はい。」
もしかして、傷つけるようなこと言ってしまったのかな…
彼の雰囲気を察し、リズは少し不安になった。
「あっ! あのっ!
服っ…!」
肩に掛けられた服を返そうと、リズは立ち上がった。
「ーーーー………」
その時、
その場にすでに彼の姿はなくーーー。
リズは、ぎゅっと、手のひらにある彼の洋服を握り締めた。