誰かの為のラブソング
愛香曰わく、
駅の噴水広場で歌っているあの彼は、ユウと言って、RozeeL(ロゼル)のボーカルをしていたらしい。
地元のインディーズファンは、知らない人間がいないほど、RozeeL(ロゼル)は超有名バンドだった。
しかし、1年前に突然、ボーカルのユウが脱退し、ギターのユキがボーカルを担当するようになった。
その当時のファンはユウ派とユキ派に分かれ、ユキ派はRozeeL(ロゼル)に。
ユウを支持するファンは、今もこうして路上で活動するユウのライブに毎週集まっているんだとか。
「だからね~
熱狂的なファンが多いから、声もかけれない状態なのよー。
取り巻きみたいな女の軍団がいてさ。
ファン歴が短いあたしらを上から目線で見てさ。
近づこうとでもしたら
大変なんだから。
ムカつく話なんだけどね。」
愛香がここまで口実にこだわっていた理由がようやくわかった。
「……なんか
凄いんだね……
まだメジャーデビュー
してるわけでもないのに…」
「でしょ。
聞いたら分かるよ。
RozeeL(ロゼル)の曲。
音楽音痴のリズでもね。」
「愛ちゃん、
それ ひっど~い~」
愛香の冗談を真に受けたリズは頬を膨らませた。