誰かの為のラブソング
リズはライブハウスの前で悩んでいた。
「ど…どうしよう…」
待ち合わせをしているのに、一向に愛香は現れない。
なんだか、自分は場違いのような気がして、心が落ち着かなかった。
Crazy kingdom(クレイジーキングダム)で開場を待つファンは男が多く、大人数でたむろっている。
Tシャツから覗く腕にはタトゥーが見えていて、リズは完全に浮いている様だった。
今回、リズは生まれて始めてライブハウスに足を運ぶ。
思えば、今まで音楽には全く縁のない生活だった。
取り立て好きなアーティストなんかいなかったし、自分で買ったCDさえもない。
テレビやラジオから流れる音楽を軽く聞くだけで、音楽にのめり込むような興味は全く無いに等しかった。
「いた、いた!
リズっ~!!」
ライブハウスの入り口に出来ている人混みの中から、リズを呼ぶ手だけがわずかに見え隠れする。
「愛ちゃんっ!」
リズは心細くて仕方がなかった。