誰かの為のラブソング

「今日はどうした?
体調は大丈夫か?」

担任の上田先生が優しい眼差しで、リズをじっと見つめた。


痩せ型の長身。
年は30代前半で、何でも親身になって話を聞いてくれる先生。


リズが在籍する2年3組の生徒からは勿論、顧問をするサッカー部の生徒からも信頼は厚い。


リズは上田先生が大好きだ。


「はい…。朝から気分が悪かったんですけど…
今は大丈夫です。」


罪悪感。

本気で体のことを心配してくれる上田先生に対して、もの凄い罪悪感を感じた。

まさか、寝坊した上に髪がまとまらないから、遅刻しました。なんて、口が裂けても言えない。


上田先生だけには、
言えない。


「そうか~安心した。
また気分悪くなったら、保健室に行くんだぞ?

変な気を遣って我慢なんかするんじゃないぞ。」

上田先生は知っている。

リズは何でもギリギリ
まで我慢することを。


先生の前では言いたいことも胸の内にしまい込んでしまうことも。


「……先生
ありがとう。」

「?!
やけに今日は素直だな~
やっぱり体調悪いとみた。」


にまりと微笑む先生を尻目に、リズは少し照れ笑いを見せる。


先生には嘘を貫き通すしかなかった。



だって、
この学校は色々
面倒くさいことばかり
だから。


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