誰かの為のラブソング
怒号のような声援が上がった。
オーディエンスは前へ前へと押し進んで行く。
ドラムのリズムを合図に、
RozeeL(ロゼル)のライブが始まった。
悲鳴にも怒号にも聞こえる声援は、ライブのオープニングからテンションを最高潮へと盛り上げた。
「リズっ!
あの人!
ギター持って歌ってるのがユキだよっ!」
RozeeL(ロゼル)のサウンドの重厚感に圧倒されて、愛香の声が全く聞こえなかった。
「……………。」
リズは、ユキを見つめていた。
長身で少し長めの髪。
髪で顔の表情が隠れて余り見ることが出来ない。
ユキはギブソンレスポールのギターを抱え、淡々と歌っている。
全編英語の歌詞。
発音がとても綺麗で、声質が似ていた。
あの路上で歌っていた彼とよく似ていた。