誰かの為のラブソング
「あずのお兄さんがクレキンの店長さんなんだ~実は。」
ライブハウスは閑散としていた。
ライブが終わった後のホールはどこか寂しげに思えた。
「愛香~!
兄貴がいいって。」
ライブハウスの出入り口に顔だけ出したあずさは、にんまりと微笑んだ。
「ありがと~!
ほらっリズ!
ダメ元で当たって砕けろ~!」
なんだか、好きな男の子に告白するみたいな雰囲気になっていて、少しだけリズは笑えた。
「……………。」
あずさに案内され、楽屋へと向かった。
廊下には、ライブに出演するバンドのチラシが所狭しと貼り巡らされていた。
RozeeL
今井友喜の他に
ベース,ギター,ドラムのメンバーが映っている。
チラシにはライブの日程が記載されていたが、その上から赤のペンで SOULD OUT と全て書かれていた。
人気があるのはわかる気がした。
曲も演奏も友喜の歌も凄かったし。
「…なんか、
凄いていう言葉しか出てこないや。」
彼はカリスマ性も兼ね備えている。
見た者を虜にさせる力は十二分にあった。
あの路上の彼は、何で
RozeeL(ロゼル)を辞めちゃったんだろう…。
リズはふとそう思った。