さようならの唄
それから毎日
ハンズと子犬は
一緒でした

ハンズは子供のままで
子犬はどんどん成長しました

でも
関係はかわりません

どのくらいの日々が
過ぎたか
わからないけれど

毎日来ていた犬は
いつの間にか
来なくなりました

2日に1度が
3日に1度になり
4日に1度になり

もう10日も
来ていない

ある日
ハンズはなにか
足りない気がしました

なにも
わからない…

けれど

ハンズは立ち上がり
歩きだしました

少し歩いた路地の奥
小さな犬がいました
ゴミ箱の横の
ボロ切れの集まりの中に

あの子犬だった
犬がいました
ただ
その犬は
子犬でも
元気な若い犬でもなく

弱りきった老犬でした

ハンズが近寄ると
老犬は少し体を起こし
力なくパタパタと
ボロボロの尻尾を
振りました

ハンズは
いつものように
膝に乗せました

なぜ
そうしたのか
わからないけれど

膝に乗せました

老犬は
嬉しくて
嬉しくて
嬉しくて
涙がポロポロ
こぼれました

ハンズの手は
冷えきった
老犬の体を
暖かく
暖かく
包んでいました

老犬は
ハンズと過ごした
幸せな日々を
思い起こしました

だんだんと
体の力が
抜けていくのが
わかりました

でも
ハンズの
温もりだけは
確かに
そこにありました

最後の力を振りしぼり
老犬は顔をあげました


すると
ハンズの瞳から
ポロポロと涙が
溢れていました

いつもの
無表情の瞳から
綺麗な涙が
溢れていました
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