しーくれっとらぶ
「唯に言わなあかんことあんねん…『わかってる…っ!』


あたしは龍の声を遮って言った。


『わかってるよ…。もうマンションにも行かない…、指輪もネックレスもつけない…。わかってるから……』


だから帰ってよ…。
あたしちゃんとわかってるから…。


「唯」

『呼ばないで……っ』


久しぶりに龍から名前を呼ばれた……。
それだけで涙が出そうになる。
気持ちが溢れそうになる……。


『忘れられなくなるから……っ。だから帰って…』

「………」


しばらく龍は何も言わなかった。
だけどドアの向こうにいることはわかってた。
だからあたしも黙ってた。


「…俺勝手やな……。今さら会いたい言われても困るよな……」


あたしは龍の言葉を黙って聞いていた。


「でも…どうしても会って謝らないけんことがあんねん……」


あたしに謝らなきゃいけないこと……?

もしかして…それが慎君が言ってた"龍が苦しんでる"理由なの……?








< 740 / 854 >

この作品をシェア

pagetop