しーくれっとらぶ
あたしは未だに震える手で携帯を操作して聖夜に電話をかけた。



プルルルル…━



【もしもし、唯?】


聖夜はすぐに電話に出た。
電話の中からは聖夜のお店のBGMが聞こえる。
普段、仕事中は携帯を持たない聖夜があたしから連絡が来たらすぐにわかるように持っていたんだとわかった。



『…聖、夜…』

【唯、何かあったのか!?
今どこいんだよ。】

『…っう…っ……聖夜ぁっ…ひっく…』


聖夜の声を聞くと一気に涙が溢れてきた。


【唯落ち着けって…!!
今どこにいるかわかるか!?】


あたしの声であたしに何かあったんだと察知した聖夜はあたしが今どこにいるのか聞いてくる。

だけど、あたしが車から降ろされたのは知らない場所で、今自分がどこにいるのかなんてわからなかった。


『…わかん…ないっ…知らない公園っ…ヒック…』

【どこの公園?
━…何か他に目印になるもんとかないか!?】


目印…
あたしは辺りを見回した。

だけど、目印になりそうなものなんて見つけれなかった。


『ないよぉっ……』

【建物とかもないのか?】


聖夜の言葉を聞いてあたしは公園の外に出てもう1度辺りを見回した。


すぐそこに、大きな建物があった。


―□□株式会社


『□□……』

【何!?聞こえねぇっ。】

『□□株式会社ってビルがある……』

【□□…?―!わかった、すぐ行くから動くなよ】


聖夜はしばらく考えた後そう言って電話を切った。




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