シークレット・ガーデン ~禁断のキス~【更新停止中】
act7.母との遭遇
外界の雨の音を遮断した舞台で、今日も練習は続く。
今日は『オペラ座の怪人』の中でも、激しいダンスの練習だ。
オペラ座の新年を祝う、仮面舞踏会。
その様子をうつした、『マスカレード』という曲だ。
舞台に作られた階段にずらりとキャストが並び、
扇を手に、一糸乱れぬダンスをする。
もちろん主役のあたしと、恋人役の涼介はその最前線で……。
叱られまくっていた。
「全然息があってないじゃないか!
足も上がってない!やる気あるのかお前らっ!」
「「はい、すみませんっ!!」」
謝るタイミングはばっちりなのに……。
劇中で、婚約をしたという設定のクリスティーヌとラウルは、
仮面で顔を隠さない。
つまり、表情が丸見えなので、そちらにも気を使う。
すると、手足がお留守になってしまったりして……。
バレエの教室、休まないで行った方がいいかも……。
やっと休憩になって、キャストたちはそれぞれ腰を降ろした。
「むしあっちいなー。
早く梅雨、終わってくれねーかな」
「そうしたら、本格的に夏が来ちゃうよ」
「そしたら、エアコン入れてくれるだろ。
あー、くっそー……」
涼介がふざけて、座っていたあたしの膝を枕に寝転ぶ。
するとすぐに、エキストラの女の子たちのひそひそ声が聞こえてきた。
可哀想だけど、涼介の頭をそっと床に降ろす。