シークレット・ガーデン ~禁断のキス~【更新停止中】
ちぃは基本、一人で舞台をながめていた。
ぽつんと、枠からはみ出たようにして。
はたから見たら、完全に浮いている。
だけど本人は、そんなこと全然気にしていないみたいだ。
あたしの姿に気づくと、小さく笑って手を振ってくれた。
すると……。
「きゃあっ、佐藤君が手を振ってる!」
「誰?誰に手を振ってるの?」
キャストの女の子たちから、歓声にも似た悲鳴があがった。
ちぃはそれに気づいてるのか気づいてないのか、
あたしが手を振り返す前に視線を外し、教師と話しだした。
「かーっこいいよねー、彼!」
「照明だっけ?何でキャストじゃないのかな?
まさにラウルって感じなのに!」
本当のラウル、すぐ目の前にいますけど。
ほら、涼介が悔しそうな顔をしてる。
「えー、ラウルはやめてよー。
クリスティーヌがあれじゃ台無しじゃん?」
クスクスと、悪意のある笑い声。
はいはい、もう慣れましたよ。
演歌歌手の娘が主役取ったことが、そんなに悔しいかい。
「はい、練習再開するぞー」
教師が戻ってきて、キャストは一斉に立ち上がった。
ちぃ、見ててね。
あたし、負けないよ。
その後の練習は、一度も叱られることはなかった。