シークレット・ガーデン ~禁断のキス~【更新停止中】
act10.二人の幽霊
あたしは、音響装置の前で座り込んでしまった涼介を置いて、講堂の外へ駆け出した。
誰かが呼んだ救急車の音が、遠くに聞こえる。
だけど、そんなことはどうでもいい。
まだ、近くにいるはずだ。
あんなことを、もし彼がしたというのなら、だが。
「────ちぃ───!」
思わず名前を呼ぶと、目の前が陽炎のように、ぶわりと歪む。
かと思うと、その空間のゆがみから、女の幽霊が現れた。
『彼は、あの秘密の庭に帰ったわ』
「……!?」
『あなたが彼の力を目の当たりにした、あの庭よ』
その声が言うのは、ちぃの家の庭に違いなかった。
あたしが初めて、ちぃの力を目の当たりにした、あの場所……。