シークレット・ガーデン ~禁断のキス~【更新停止中】
「ひなたちゃん、でしょ。
クリスティーヌ役に決まった、パフォーマンス科の」
彼の声に、ハッと正気に返る。
「知ってるの……?」
「うん。俺、デザイン科の2年だから、今日のオーディション見てたよ」
「やっぱり……一番後ろででしょ?」
「あれ?あんたこそ、俺を知ってるの?」
何と答えていいか、わからなかった。
確かに知ってると思う。
だけど、名前も、どこで会ったのかも思い出せない。
でも、絶対この人に会わなきゃいけない気がしたんだ。
あたしは勇気を持って、正直に言ってみることにした。
「ごめんなさい、思い出せないの。
どこかで会ったことがあると思うんだけど……」
「なにそれ」
「…………」
何それ、だよね。
あたしだって、何で家まで尾行しちゃったのか、わからないんだもん。
彼は、何故か、寂しそうに笑った。
「で、ひなたちゃん。
ここで、何してるの?」
「あっ……それは、その……」
どう説明していいものやら……。
迷うあたしの前を、どこかの野良猫が一匹、
通り過ぎていった。