シークレット・ガーデン ~禁断のキス~【更新停止中】
「キャストに向いてるよねー、彼は」
あたしは恵にそう話しかけた。
恵はポーッとした顔で、うなずく。
「びっくりした……
あんな子、デザイン科にいたんだ」
「転入らしいよ。最近の」
「え?5月に?
しかもそれで照明デザイン任されるなんて……
何者?」
恵は冷静に突っ込んだ。
そう言われれば、そうだ。
彼は色々と不自然だ。
あたしの脳裏には、
あの庭での出来事が浮かぶ。
一体、彼は何者?
だけど、何者かと聞かれても、
あたしは彼の名前以外、何も知らない。
ううん、知ってるはずなの。
なのに、思い出せない……。
千影くんは、あたしなんか知らなかったみたいだ。
ただの、勘違いなのかな……。
あたしは黙って、一人きりで歩く彼の背中を見送った。