夢花火
歩いていると、土方を見かける。
土方は、桜の木を見上げていた。
「ひじか…」
声をかけようとして、すぐに口を閉じる。
…土方は、少しだけ涙を流していた。
慌てて自分の部屋に戻ろうとすると、声をかけられる。
「千春…?」
後ろを振り向くと、土方がこっちを見ていた。
軽く鼻をすすりながら、土方が近付いてくる。
「…情けねえな」
「え…」
「”鬼“は、涙なんて流さねえよな」
土方はそう言って目元を拭い、軽く笑った。
「無理するなよ…」
そう言い、私は土方の手を握る。