夢花火




カキンッカキンッ


何度も、刀がぶつかり合う。


「貴様…。隙がないわりには、あまり打ち込んでこれないのか…?」


いつでも、とどめをさせる状態だった。

でも…。
斬るなんて、出来ない…。


そのとき、腕に激しい痛みが走る。

血が流れていく感覚がする。


…斬られたんだ。


「これで、終わりだ」

浪士はニヤリと笑うと、私に向かって刀を振り上げた。


死を覚悟し、ギュッと目を瞑った。


その瞬間…。
ザシュッと音がする。


でも、痛みは感じない。



ゆっくりと目を開けると、男がどさっと音を立てて倒れるのが見えた。



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