夢花火
「ねぇ、松林さん」
「え?」
「一緒に帰ろうよ」
何を言いだすかと思えば。
「…何で?」
「私の家、松林さんと近いんだ。ね、いいでしょ?」
少し、躊躇った。
どうしていきなり、こんなに構ってくるんだろう。
でも、いつの間にか二人で昇降口まで来ていた。
これなら、一緒に帰るしかないのだろうか。
「決まり。帰ろう!」
水野はそう言い、歩き出した。
私も慌ててついていく。
それからは、特に何も話さず、二人並んで帰った。
この無駄にも思える時間は何なのだろう。
やっぱり、一人で帰れば良かった。
「あ…。私の家、ここ曲がった所なんだ。松林さん、明日からも一緒に帰ろう?」
「別に、私はどちらでも」
あなたがこの気まずい空気に耐えれるのなら、ね。
感じ方はやっぱり違うようだ。
気まずいとは、思わないのだろうか。
「良かった。じゃあよろしく!千春!」
いきなり、名前呼び。
こういうときはいつもなら断る。
でも彼女の圧が強すぎて、断る隙はなかった。