堀江くんの遠回りな恋
「えっ……、どうした?茜?」


「あ、上がってってくださぃ……」


そう言いながらオレを後ろから抱きしめる茜の手は微かに震えていた







オレはその姿勢のまま、少しの間考えた


このまま、手を解き帰ることも出来る


ただ、背中から回された茜の華奢な手に筋が浮くくらいギュッと力が入っているのを見るとーーー


オレは部屋に上がることにした


部屋に上がるということはどういう事かオレもそして茜も理解している……







「どうぞ……狭いですけど……」


少しうつむき加減で照れたように言うと、オレを部屋の中に招き入れてくれた


茜の部屋は淡いピンクが基調となったかにも女の子という感じの可愛らしいインテリアで統一されていた


取り敢えず、ソファに並んで腰を降ろす


オレと茜の間に空いた微妙な距離感が今のオレたちを表している


オレがこうして部屋に上げたということは茜もそれなりの覚悟があるんだろうし


オレにしても今日はキスより先の展開もありえるということで…





ただ……


こんな中途半端なオレが今、彼女を抱いてしまってもーーー


果たして良いのか悪いのか……


一人考え込んでいると


茜がオレに抱きついてきて




「抱いて欲しい…」

って小さな声で言った



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