二人一つ
彼の目覚め
彼女はある日、突然僕の手を憎々しげに強く強く握り締めてきた。
僕があまりの痛さに声を上げると、彼女は弾けたように僕の手を見て、涙を流しながら何度も何度も謝った。
僕は困惑しながらも、彼女を笑って許した。
しかし、僕はそれから彼女と別れた瞬間。
途端に彼女が憎くて憎くて、憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて堪らなくなった。
殺してやりたい。
殺さなければならない。
僕は心の中で蠢くどす黒い感情を必死に押さえ付けながら、家に帰った。
僕はその時、気付いた。彼女は僕と『同じ』だと。
だから、僕は彼女を殺す。
絶対に殺してやらなければならない。
そうしないと、僕は彼女に奪われてしまうから。
稲瀬優紀【いなせゆうき】が、稲瀬優紀に奪われてしまわないように、僕は『同じ』稲瀬優紀である彼女を殺す。
僕を守る為に。