二人一つ
彼女の強さ
キーン、コーン、カーン、コーン――――。
昼休みが終わってしまった。
私は彼にとうとう鍵を突き付けられ、鍵口をつつかれた。
私は彼の薄い笑みを浮かべて強張っている顔を見つめ、微笑んで見せた。
「えぇ、もちろん殺したいわ」
彼は私の言葉を聞き、表情を歪ませた。
「ほら、きっと貴方も私を殺すモノを持ってるだろうけど、私も持って来たのよ」
私は無邪気そうな笑みを浮かべて、茶色い手提げ鞄の中から大き目の黄色いカッターナイフを取りだし、刃を出して目の前にちらつかせた。
ごくっ、と唾を飲み込む音が彼から聞こえた。
怯えているのか、それとも興奮しているのか、私にはわからなかった。
私は長めの髪をおもむろに払い、彼を見つめた。
「でも、私はどんなに貴方を憎んでいても、恨んでいても、殺したいと思っていても……」
彼の困惑する眼を視界の端で見ながら、私はカッターナイフの刃を最後まで押し出し、手の平で折った。
「っ……!」
「っ!?」
カッターの刃が地面にカランと落ち、私の手の平から赤黒い血が滴った。
「私は……貴方を殺せはしない」
あぁ、もう五時限目が始まった。