そばにいて。
「やっぱりさー、泰治(タイチ)君が一番カッコいいね!」
「なーに言ってんの!泰治君には花巻(ハナマキ)さんっていう彼女さんが居るじゃない」
「えー?ただの幼馴染みでしょ?奪うからいいもーん
真香だって泰治君カッコいいと思うよね?」
いきなり話をフラれて、ぴくりと肩が動く。それでも何でもないフリをして曖昧な笑顔を浮かべる。
「さぁ?どうだろ?」
わかんないや、と言えば、えー!と口を尖らせて不満そうにする女子に、小さく溜め息を吐く。
正直、この峯田泰治と花巻小百合の話はキライ。けれど表に出せばややこしくなるのが目に見えている、曖昧な笑顔のままふと手元を見れば筆箱が無いのに気付く。
マジかよ、今から間に合うかな。
「ごめん、私筆箱教室に「あ!泰治君だ!」
私の言葉を遮り発せられた話に、全身が硬直する。
キラキラ輝いた瞳でほらほら!と女子が指差す先に、ゆっくりと振り向けば、身長が随分伸びてカッコよくなっていた泰治と、その横には昔より数段可愛らしくなった小百合の姿。
そう、私の幼馴染みの姿。