Time【仮】





そう悩み続けて、毎日朝を迎える。



―――――おはよう。


遠い意識の中で、あたしは夢の世界と現実の世界の境目に立っていた。


―――――胡桃。


誰かが遠くであたしの名前を呼んでいる。


聞き覚えのある、優しい声があたしを現実へと案内してくれる。


「遅刻するわよ!」


もう少しでゆっくり瞼が上がりそうだったのに、勢いよく大声で叫ばれてビクッと身体が震えて目が覚めた。


「……ママ」


てっきり目を開けたら部屋の天井が見えると思ったのに、ママの顔がドアップで飛び込んでくる。


ママが着てるエプロンからは、ほんのり玉子焼きの匂いがした。


「はぁ…もうちょっと寝起きが良かったらママ助かるのに」


ママは文句を漏らしながら、あたしの跳ねた寝癖をペタペタと触った。


あたしは人より、寝起きが悪いらしい。


いつもあたしが起きた時間には、二つ上のお姉ちゃんが支度万全で玄関で靴を履いている。





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