君にすべてを捧げよう
「ん? あれ?」


急に抵抗しなくなったあたしに、鏑木さんが不思議そうに呟いた。


「どうしたの? ハイネ」

「い、いえ……」


だめだ、泣きそう。
ぐ、と堪えて俯くと、頭のてっぺんにそっとキスされた。


「あのさ、ハイネ」

「はい」

「本当にさ、俺と付き合わない?」

「……え?」

「俺にしなよ。大事にするよ?」


ちゅ。再びキスされる。
それは、次第に角度を変え、こめかみに落ち、瞼に落ち、頬に流れた。
そっと優しく触れる唇に、意思とは反して躰が震える。

蓮に傷つけられた心が、縋りつきたそうに鳴く。


「泣かしたりしないよ? 幸せだって思えるようにする」

「か、鏑木さ……、こういうの、止めて下さい」


掠れた声で言えば、耳元でそっと問われた。


「揺れる?」

「わ、分かってるならやめて下さい!」


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