君にすべてを捧げよう
「めぐる、もっと鳴いて?」



智は、言葉通り、自分以外見せなかった。
あたしの五感全てを自分の物にしてしまった。

あたしの世界は、智だけに支配されていた。


「や……、は……っ」


躰の奥が熱い。
中がどろどろに溶けて、内側から溶けていくのではないかと思う。


「智……とも……っ」

「ん。もっといっぱい呼んで」


最も敏感な場所に、指先が到達する。
擦られれば悲鳴のような声が漏れた。


「あ……いや……、はっ、と、智ぉ……」


こんなにも甘えた声が自分から溢れていると思えない。
でも、智の躰に縋るようにして鳴いた。


指腹が動くたびに快感を呼ぶ。
それに溺れていると、引き上げられるように痛みが走った。

ぐ、と中心に侵入してくる痛み。
遠い昔に経験した痛みを思い出し、何が入って来たのか理解する。

長い指が動けば、耐えようと眉間を寄せる。
やりすごそうと智の躰に抱きついた。
しかし、それが奥に入り込んだ瞬間、叫んだ。


「い……っ、ったぁ……っ」


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