君にすべてを捧げよう
智は、すっかり敏感になった胸元に唇を落とした。
ちゅ、と音をたてられて、びくりと震える。


「初めてを貰うみたいで、緊張するだけ」


初めて。
確かに、これがあたしの本当の初めてなのかもしれない。


「めぐる。好きだよ」

「智……」



指先が入り口に添えられた。ゆるゆると動く。


「あ……、んぁ……っ」

「大丈夫、ゆっくりやるから」


痛みの中に、一筋の快楽がある。
それを掴んでしまえば、解放されるような気がして、あたしは一心に智の指を感じ取った。


「一回だけってのは……処女よりきついな……」


智が何か呟いていたけれど、耳に入らない。
自分の声がうるさくて、何も聞こえない。


「でも、一回ならまだ忘れられるよ、めぐる」

「あ……、や……っ、は、ぁ……ん」


指が楽になってきたころ智自身に変わり、あたしはそれをどうにか受け入れることができた。
そして、障子にほんのりと朝日が差し込むまで、あたしは智と深く繋がったままだった。


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