君にすべてを捧げよう
「おはよう、智」

「おはよ。ていうか、起きたらいなかった」

「だって、朝ご飯作ってたんだもん」


腕の中で会話をしている内に、口調が砕けたものにかわってしまった。
それは思っていたよりもあっさりと自分に馴染んでしまい、仕事中にやらかしてしまわないようにしなくちゃな、と思う。


「起きたら腕の中にいるっていうのが理想だったのにー」

「お腹すいたでしょ? もう準備できたよ? ほら」


小鍋の蓋を取ると、ふわりと出汁と味噌の香りが立ち上る。
テーブルには厚焼き卵と焼き鯖、キュウリの和え物が並ぶ。
それを見た智は、仕方ないなー、と頭を掻いた。


「これはこれですごく嬉しいです」

「じゃあ、顔洗ってきて、ご飯にしよう?」

「はーい」


それから、二人で限りなく昼食に近い朝食をとった。


「この間も思ったんだけどさ、めぐるってすごいがっつりと朝食作るよね。毎日こんな?」

「うん。昼食が適当になること多いでしょ? だから、朝だけはしっかり食べるの」

「おー、なるほど」


のんびりとした食事も悪くない。


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