君にすべてを捧げよう
「これから、どうする? 映画でも行く?」

「あ。あたし観たいのがあるの」

「甘いラブロマンス?」

「からかってる? まあ、そうなんだけども。じゃあ、支度しようっと」

「一緒にシャワー浴びてあげようか?」

「結構です」


明るい中で躰を晒せるはずがない。
丁重にお断りをして、一人でシャワーを浴びた。
日の光の下でみる体は、起き抜けに見た時よりも花弁の数が多いように思う。

それらすべてに智の唇が触れたのだと思うと、知らず、顔が火照る。


「これで、よかったんだよ、ね……」


大切に、大事にしてくれる人。尊敬すらしている人。
報われない恋を大事に抱えて生きていくよりも、きっといい。



二の腕の付け根に零れる花弁に、そっと自分の唇を寄せた。


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