君にすべてを捧げよう
「瑞穂! どこだ!?」

「あーもう。タバコくらいゆっくり吸わせろっつーの。はーい!!
あ、じゃあ行くわね。しばらくお邪魔するのでよろしく!」


携帯灰皿にタバコを押し付けて、瑞穂さんは駆け出した。


「瑞穂! すぐ来い!!」

「馬鹿蓮! 今行くってば!」


叫びながら、離れの中に消えていく。


「綺麗な人だねー。あの人が、ミズホさん?」


あたしの横に並び、それを見ていた智が訊いた。


「うん。蓮の昔の……友人で、今は彼女だって」

「……へえ」


振り切るように、頭を振った。


「さ、行こ?」

「ん。行こっか」


智が手を差し出す。
それに触れれば、指を絡ませるようにして握られた。


「めぐるの手、ちっちゃ。こんなだったんだ?」

「智の手、おっきい。こんなだったんだ?」


ふふ、と笑いながら歩く。
背中に意識が集中している。
それでも、後ろを振り返らないように意識していた。


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