君にすべてを捧げよう
「なんて……馬鹿みたい……」
もしもの話なんてしても、今は変えられないのに。
ふ、と目を開け、テーブルに置いたままだったノートを取り上げた。
蓮の文字をなぞる。
美恵さんが亡くなってもう6年、まだ6年。
一度は死んだ蓮の心は、6年の時を経て、今ようやく新しい一歩を踏み出したのだろう。
捨ててしまった作家としての自分を取り戻す気になったのだから。
蓮は、進み始めたのだ。己の力で。
過去に、捨てた想いに囚われているのはきっと、あたしだけ。
「がんばってね、蓮……」
そっと、呟いた。
もしもの話なんてしても、今は変えられないのに。
ふ、と目を開け、テーブルに置いたままだったノートを取り上げた。
蓮の文字をなぞる。
美恵さんが亡くなってもう6年、まだ6年。
一度は死んだ蓮の心は、6年の時を経て、今ようやく新しい一歩を踏み出したのだろう。
捨ててしまった作家としての自分を取り戻す気になったのだから。
蓮は、進み始めたのだ。己の力で。
過去に、捨てた想いに囚われているのはきっと、あたしだけ。
「がんばってね、蓮……」
そっと、呟いた。