君にすべてを捧げよう
けらけらと笑ったつぐみは、ついと部屋の中を見渡した。
すっかり物がなくなったリビングからは、赤いソファも姿を消していた。
「本当に、めぐる、いっちゃうのねー……」
明々後日、あたしはこの家を出ていく。
ここから消えた荷物は全て梱包されて、客間で移動を待ちわびているのだ。
「うん……。しばらくは、帰って来れないかもしれない」
「そうだよね、うん。忙しいもんね」
「アパートに落ち着いたら、来てね。けんちゃんが遊ぶには狭いけど」
「その時は置いてくわ。めぐるといっぱい話したいもん」
しんみりしてしまう。
つぐみとはしょっちゅう会っていたわけではないけれど、それでも、会いたいときにすぐ会えなくなるのは、寂しい。
「辛くなったらさー、愚痴の電話してきてよ。嫁姑問題とか、相談のプロよ、私。
あ、でも同居じゃないのよね?」
「お義父さんたちは、お義兄さん夫婦の家に同居してるから」
先週、智のご両親の元に挨拶に行った。
上品な、穏やかな方たちで、あたしのことを歓迎してくれた。
お義兄さん夫婦もとても優しくて、きっとうまくやっていけると思う。
「そっかー。まあ、しばらくは甘い新婚生活でも楽しみなさいよね。いつ入籍するの?」
「明日両親が帰国するから、それ次第かな。一応、あたしの誕生日にって言ってくれてるんだけど」
「めぐるの誕生日ってことは、あー、明後日か。やだ、もうすぐね」
「う、ん……」
すっかり物がなくなったリビングからは、赤いソファも姿を消していた。
「本当に、めぐる、いっちゃうのねー……」
明々後日、あたしはこの家を出ていく。
ここから消えた荷物は全て梱包されて、客間で移動を待ちわびているのだ。
「うん……。しばらくは、帰って来れないかもしれない」
「そうだよね、うん。忙しいもんね」
「アパートに落ち着いたら、来てね。けんちゃんが遊ぶには狭いけど」
「その時は置いてくわ。めぐるといっぱい話したいもん」
しんみりしてしまう。
つぐみとはしょっちゅう会っていたわけではないけれど、それでも、会いたいときにすぐ会えなくなるのは、寂しい。
「辛くなったらさー、愚痴の電話してきてよ。嫁姑問題とか、相談のプロよ、私。
あ、でも同居じゃないのよね?」
「お義父さんたちは、お義兄さん夫婦の家に同居してるから」
先週、智のご両親の元に挨拶に行った。
上品な、穏やかな方たちで、あたしのことを歓迎してくれた。
お義兄さん夫婦もとても優しくて、きっとうまくやっていけると思う。
「そっかー。まあ、しばらくは甘い新婚生活でも楽しみなさいよね。いつ入籍するの?」
「明日両親が帰国するから、それ次第かな。一応、あたしの誕生日にって言ってくれてるんだけど」
「めぐるの誕生日ってことは、あー、明後日か。やだ、もうすぐね」
「う、ん……」