君にすべてを捧げよう
「ねえ、美恵さんが出てきたのは、本当?」


訊くと、蓮は「ああ」と短く答えた。


「笑って、もういいって言ってくれたんだ。俺の見た幻かもしれんが、信じたい。
美恵が苦しんだままでいるなんて、嫌だしな。
でも、踏ん切りがついただけで、美恵のことを忘れるわけじゃない」

「ん」


頷いた。
蓮が囚われていないのならそれでいい。
あたしだって、忘れないのだから。


「めぐる」

「ん?」


名を呼ばれて見上げれば、口づけが降ってきた。
優しく触れて、離れる。
見たこともないほどの、優しい蓮の顔がそこにあった。





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