君にすべてを捧げよう
【2】



あたしと蓮が結婚する、と各方面に報告すれば、驚くばかりの反響があった。

と言ってもそれはほぼ、蓮サイドのみであるが。

一時は人気作家と持ち上げられた作家、坂城蓮としてみれば、まあ当然なのかもしれない。
数年ぶりに発表した作品が売れたせいで再び世間に注目され始めたせいもあるし、結婚相手があとがきに登場した『元少女』であることも、耳目を集めたのだろう。

自宅の周りにマスコミ関係者と思われる人がうろついていたり、近所のおばさんや、さかまき堂（よもぎまんじゅうのおいしい和菓子屋さん）の店主さんがインタビューを受けたりと、一時期は騒然としたものだ。

さかまき堂なんか、『坂城蓮とその婚約者の大好物のよもぎまんじゅう』なんて言って自商品をアピールし、店に行列ができたらしい。ホクホク顔の店主さんが、山盛りのよもぎまんじゅうをお礼にと持ってきてくれた。


「めぐるちゃんはどんな人かって聞かれたからさ、女優さんかと思うようなとびきりの美人だって答えておいたよ！」


ハードルを上げすぎです。勘弁してください。

皆があたしに気を使って褒めそやしてくれたせいで、あたしは世間様ではまさかの美女扱いされている。
申し訳なさ過ぎて表を出歩けないでいるので、あくまでそれは『世間様の想像上』のことであるが。

一度など、『めぐるさんは肉感的美女！　ロージー・ハンティントンに激似！』と題されてグラマラスなトップモデルの写真付きで報道されてしまい、それを観た蓮が笑い転げるという非常に悔しいこともあった。
あんな谷間があれば、せめて肉感的という言葉くらいは有難く頂いたと言うのに、虚しさだけが残る。

一体誰だ、巨乳だなんてデマ流したのは！！


< 255 / 262 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop