君にすべてを捧げよう
どうにも、蓮の機嫌が良い。
にこにこと笑んで手招きするので、コンロの火を一旦止めて、リビングに戻ることにした。
「なんか機嫌いいね? 蓮の欲しいものでも入ってたの?」
「いや、どうかな。お前宛みたいなもんだしな」
「えー?」
食器かな。いや、食べ物というセンもあるか。あたしがまんじゅうや甘いものが好きというのはどうやら周知のことになってしまったようでもあるし。
えー、あんなに大きな箱だし、食べきれるかなー。いや、嬉しいけど。
「コーヒー淹れてるトコだし、クッキーとか嬉しいんだけど、なー……」
かぱ、と段ボールを開けて、止まった。
そこには、どう着るのかもわからないような、ヒモと僅かな布きれで構成されたドレス(と言っていいのかわからない)たちと、下着、幾度も目にしてきた『大人の嗜好的玩具』がたっぷり収まっていた。
「これ読め」
茫然としたあたしの前に、蓮が熨斗をひらりと落とす。
それには、『ご堪能ください』と、それはもう達筆な字で書かれていた。
なに、これ。
のっそりとそれを摘み上げ、ぼんやりと眺めるあたしの横に蓮が屈み、ベビーピンクのブラジャーを取り出した。
乳首を隠すのが精いっぱいだろうと思わせる小さな布きれをいじって、蓮は、
「ここ、サイズみてみ?」
と小さなタグを示した。
「……G」
サイズ表記には確かに、未知のアルファベットが記されていた。
「こんなの、めぐるに合うわけないよな。Gなんてそんなにあるわけがない。
俺に聞きゃいいのに、勝手に何やってんだろうな。
だいたい、高梨はお前に会ったこともあるんだから、そんなにないことくらい、分かりそうなもんだけどなー」
けらけらと、それはもう愉快そうに蓮が笑う。
びっくりして固まってしまっていたあたしは、ゆっくりと、状況を把握し、そしてキレた。
「△△社はもう我が家に出入り禁止ーっ!! 敷居跨いだら荒塩まいてやる!!」
絶対絶対塩まく。原稿待ちも外! 一晩でも二晩でも門の前で立ち尽くしてろ!
呪詛を吐くあたしを、蓮が笑いながら見ている。
それすら腹が立って、あたしは段ボールの中から布たちをがっしと掴みとり、蓮の顔に投げつけた。
「こんなヘンなもの、蓮が捨ててよね! あたし、これには二度と触らないから!」
頭に黒い紐の集合体を乗っけた蓮が、ふむ? と首を傾げた。散らばる中から一枚のベビードールを拾い上げて肩ひもの部分を持ち、あたしの目の前に掲げる。
「ヘンなものばっかりってことはないだろう。これなんかは、いいと思うがな。嫌か?」
真っ白のレースをふんだんに使い、胸元に大きなリボンがあしらわれたそれは、たしかにこの中ではマトモに可愛い部類に見えた。
だけど透過性に富みすぎているし、なによりそんなキュートなものが自分に似合うとは、到底思えない。
「嫌って言うか、恥ずかしいし! そんなの着るの、まず恥ずかしくて無理!」
「何が恥ずかしいんだ? 見るのは俺だけだぞ」
ちょっと来い、と蓮はあたしを引き、あぐらをかいた自分の足の上に座らせた。
背後から抱えられるように座ったあたしの、カッターシャツのボタンをさっさかと外してゆく。
にこにこと笑んで手招きするので、コンロの火を一旦止めて、リビングに戻ることにした。
「なんか機嫌いいね? 蓮の欲しいものでも入ってたの?」
「いや、どうかな。お前宛みたいなもんだしな」
「えー?」
食器かな。いや、食べ物というセンもあるか。あたしがまんじゅうや甘いものが好きというのはどうやら周知のことになってしまったようでもあるし。
えー、あんなに大きな箱だし、食べきれるかなー。いや、嬉しいけど。
「コーヒー淹れてるトコだし、クッキーとか嬉しいんだけど、なー……」
かぱ、と段ボールを開けて、止まった。
そこには、どう着るのかもわからないような、ヒモと僅かな布きれで構成されたドレス(と言っていいのかわからない)たちと、下着、幾度も目にしてきた『大人の嗜好的玩具』がたっぷり収まっていた。
「これ読め」
茫然としたあたしの前に、蓮が熨斗をひらりと落とす。
それには、『ご堪能ください』と、それはもう達筆な字で書かれていた。
なに、これ。
のっそりとそれを摘み上げ、ぼんやりと眺めるあたしの横に蓮が屈み、ベビーピンクのブラジャーを取り出した。
乳首を隠すのが精いっぱいだろうと思わせる小さな布きれをいじって、蓮は、
「ここ、サイズみてみ?」
と小さなタグを示した。
「……G」
サイズ表記には確かに、未知のアルファベットが記されていた。
「こんなの、めぐるに合うわけないよな。Gなんてそんなにあるわけがない。
俺に聞きゃいいのに、勝手に何やってんだろうな。
だいたい、高梨はお前に会ったこともあるんだから、そんなにないことくらい、分かりそうなもんだけどなー」
けらけらと、それはもう愉快そうに蓮が笑う。
びっくりして固まってしまっていたあたしは、ゆっくりと、状況を把握し、そしてキレた。
「△△社はもう我が家に出入り禁止ーっ!! 敷居跨いだら荒塩まいてやる!!」
絶対絶対塩まく。原稿待ちも外! 一晩でも二晩でも門の前で立ち尽くしてろ!
呪詛を吐くあたしを、蓮が笑いながら見ている。
それすら腹が立って、あたしは段ボールの中から布たちをがっしと掴みとり、蓮の顔に投げつけた。
「こんなヘンなもの、蓮が捨ててよね! あたし、これには二度と触らないから!」
頭に黒い紐の集合体を乗っけた蓮が、ふむ? と首を傾げた。散らばる中から一枚のベビードールを拾い上げて肩ひもの部分を持ち、あたしの目の前に掲げる。
「ヘンなものばっかりってことはないだろう。これなんかは、いいと思うがな。嫌か?」
真っ白のレースをふんだんに使い、胸元に大きなリボンがあしらわれたそれは、たしかにこの中ではマトモに可愛い部類に見えた。
だけど透過性に富みすぎているし、なによりそんなキュートなものが自分に似合うとは、到底思えない。
「嫌って言うか、恥ずかしいし! そんなの着るの、まず恥ずかしくて無理!」
「何が恥ずかしいんだ? 見るのは俺だけだぞ」
ちょっと来い、と蓮はあたしを引き、あぐらをかいた自分の足の上に座らせた。
背後から抱えられるように座ったあたしの、カッターシャツのボタンをさっさかと外してゆく。