君にすべてを捧げよう
「ごちそーさん。じゃあ俺仕事してくる」


熱いお茶をずずず、と飲んだ蓮が湯飲みを置いて立ち上がった。
愛水ちろんのDVDを抱えて部屋を出て行こうとする。


「はいはい。あ! この段ボール持って行ってよ!?」


見送りかけて、慌てて引き止めた。


「重たいから嫌」

「そんなの知らないし! こんなもの視界に入れて生活したくないの!」


強く言うと、自分のものなのにげんなりした様子で箱に視線を流す蓮。
と、名案! という風に顔を明るくした。


「ブック●フとかリサイクルショップに売ったらどうだ? 新品同然だし、案外高値になるかもしれないぞ。
全部めぐるの小遣いにしていいから」

「大量のエログッズをどんな顔して持ち込めっつーの! 完全に痴女じゃない、あたし」

「痴女ってめぐるはそんなんじゃないだろ。それに、向こうも商売なんだからいちいち気にしないさ。
……ん? めぐる、いつも仕事で着てる服と雰囲気が全然違うな」


蓮の視線が、鏑木さんから借りたパーカーに向けられていた。
あたしは、仕事にはカッターシャツにパンツというシンプルな組み合わせばかりで向かう。
作業しやすいと言うのが主な理由である。

千佳ちゃんのように、毎日おしゃれな組み合わせを考えて着こなす気力がないというのもあるけど。


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