君にすべてを捧げよう
「ああ、これ借りたやつなの」

「ふうん。男物ってことは、彼氏でもできたのか」

「は!? 違う! これそんなんじゃないって」


勘違いしないでよ!

ぶんぶんと首を横に振ったあたしに対し、蓮は鼻で笑い、


「彼氏ができたんなら、その中で好きなの持ってけ」


と言いのけた。


「それだけあったら彼氏がどんな趣味でも対応できるぞ。よかったな」

「ば……っ、ばか!!」


手元にあった廃棄用DVDを一つ、投げつけた。
それをひょいと避ける蓮が憎たらしい。


「ま、どうにでも活用しろ。じゃあ俺は行く」

「蓮のばかたれ!!」


絶叫したあたしの声を笑ってやり過ごして、蓮は今度こそ行ってしまった。


気配が消えたあと、空になったお皿を押しやって、テーブルに伏した。


彼氏できたのか、とかあっさり言うなよ、ばか。
あんなDVDとか、恥ずかしげもなく見せるなよ、ばか。


ずっと蓮が好きなあたしのことを気遣えよ、ばか。


「うー、むかつく」


腕の隙間から顔を出すと、蓮が置いていったDVDが視界に入った。
あられもない格好のオネーサンと目があって、無性に腹ただしくなる。

掴んで投げたDVDは、壁に当たって段ボールの上に落ちた。





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